衆院選 公約「天下り廃止」官僚動揺 「公務員制度の全体像を」  2009.08.20毎日新聞
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090820ddm008010010000c.html

 各政党が衆院選のマニフェスト(政権公約)に公務員の天下り「廃止」を打ち出し、霞が関官僚に
動揺が広がっている。国と密接な関係にある特殊法人などへの天下りが、予算の無駄遣いにつな
がっているとの批判があるためだ。明治以来の官僚組織を支えた人事制度は、天下りなしでは成
り立たない現実もあり、「公務員制度の全体像を描いてから改革を始めてほしい」との声も上がって
いる。

 中央省庁は毎年10〜30人のキャリア(幹部候補)職員を採用、入省20年程度の課長職までは
そろって昇進する。その後は局長、次官と地位が上がるにつれポストが減るため、早ければ50歳
前後で退職を迫られる職員が出ている。「出世競争からはずれた同期が退職することで、年功序
列の組織が円滑に管理されてきた」(ある官庁OB)。退職した職員の再就職先として、天下りが欠
かせない。別の官庁の現役幹部は「ピラミッド型組織の維持に不可欠な『必要悪』だ」と話す。

 「天下りあっせんの全面禁止」を打ち出した民主党。子ども手当など目玉政策の財源を、年間12
兆円の予算が支出されている独立行政法人や特殊法人を整理することなどで6・1兆円の歳入を
確保する方針だ。自民党も「天下り根絶宣言!」を掲げ、「再就職先をあっせんする官民人材交流
センターは廃止する」と表明した。

 天下り廃止には、同期入省の職員全員が定年退職まで働ける環境作りが必要。各党は、公務員
制度改革で実現を目指す構えだ。年次が上がるにつれてポスト数が減る現在のピラミッド型組織を、
長方形型に変えるものだ。

 財務省のある幹部は「次官の同期が省内に何人もいる職場環境など想像もつかない。年功序列
が崩れて仕事にならないのでは」と疑問を投げかける。

 独立法人や特殊法人の給与体系は本省の同年次の官僚より安い場合が大半で、「かえってコス
ト高になる」との指摘もある。【斉藤望】